ちゃんと公平に勝負しろ、なんて言われるから仕方なくじゃあじゃんけんで、と提案する。動体視力がいいと自負するあなたにとっては有利なのでは? なんて尤もらしい理由までつけて。後出しすんなよ、なんて今さら言われるまでもなく。だって俺はいつもあなたが何を最初に出すかその癖知ってますから。

    陽野へのお題は『じゃんけん』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    お手、と言われれば右手を差し出し、待て、と言われればゴーサインが出るまで身動ぎしない。腹が減ろうが傷が痛もうが主人の命令は俺にとって絶対で。クソみたいな理由で死ぬしかなかった俺を拾ってくれた居場所をくれたその恩に報いるためなら、この安い命なんかいくらでも使い捨ててくれて構わない。

    陽野へのお題は『犬』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    三年ぶりに再会した彼女には、ピアスが一つ増えていた。シンプルな石だけのそれは、ひっそりし過ぎて趣味ではないだろう。けれどその片割れを分け合う大事な誰かを、彼女は見つけてしまったのだ。あの日勇気を出していれば、それは僕の耳朶にあったかもしれないのになんて、苦い想いと共にグラスを煽る。

    陽野へのお題は『ピアス』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    そっと手を伸ばして柔らかい絹糸のような髪に触れる。指に絡めてもくしゃくしゃに綯い交ぜにしても、跡を残さずすぐ元に戻るそれが少し悔しくて恨めしい。くすぐったそうに目を細めて無邪気に笑うあなたが、こんなにも無防備に全てを許してくれていると言うのに、欲張りな俺はそれだけじゃ足りないんだ。

    陽野へのお題は『髪に触れる』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    ナイショだよ、と言われて心臓が跳ねた。口唇にあなたの指先が触れたからじゃない。息を飲むほど綺麗な顔が間近で見れたからじゃない。私はあなたの秘密を知ってしまった。表沙汰になればあなたの人生が即終了になるほどの。知っているのは二人だけ、吹聴なんてするはずがない。必ず墓場まで持って行くからどうか、不安を抱えてずっと私を見張っていて。

    陽野へのお題は『二人きりの秘密』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    重ねて醜態を晒す度、もう金輪際酒なんか飲まないと誓ったはずなのに、俺って奴は一体何度同じ過ちを犯せばすむんだろうか。知らない女と同衾して張り飛ばされたことは数知れず、兄弟分と真っ裸だった時も相当肝を冷やしたが、いやいやこれはないだろう。知らない男が隣で死んでるが、全く記憶になくて笑えない。おまけに両手は血塗れでこれはどう見たって俺が犯人じゃないか。

    陽野へのお題は『酒は飲んでも飲まれるな』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    オーライ、何も焦る必要はないさ。このくらいのピンチなら、オレたちは何度も乗り越えて来たじゃないか。少しくらい歯応えのある奴もいてくれなけりゃ、人生つまらないと言うもんだ。一度深呼吸して冷静になろう。何も特別なものは必要ない。自分の能力以上の頑張りも必要ない。積み重ねた鍛錬を今日ここで吐き出すだけだ。

    陽野へのお題は『いつも通りに』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    始めたのは俺の方が先だった。子供の頃から天才だ何だと褒めそやされて、実際たくさんのトロフィーやら何やらをもらって、いろんな記録を塗り替えて、このまま一生俺に勝てる奴なんか現れるもんかと思っていた。お前も始めたって聞いた時だって、遅せぇわ馬ァ鹿って鼻で嗤ってたんだ。いつの間にか肩を並べられ、追い抜かされた時だって、たまたまだとか調子がイマイチだったからって思ってた。次はまた俺が勝つってーーそう、思ってたんだ。頼りなく見えていたはずの、下だと思っていたはずのお前の背中が今、

    『こんなにも遠い』
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    突然の飲みに行くぞ、と言うメールは失恋した証。今日もまたぐでんぐでんになるまで愚痴を聞かされるんだろう。信頼してくれているのは嬉しいけども、毎回付き合ってやるの、下心がないと思われてるんだろうか。僕だったらそんな風に泣かせたりしない。後悔なんかさせたりしない。その言葉をぐっと飲み込んで今日も親友の仮面を被る。

    陽野へのお題は『好きと言えない』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    この街を出て行くことに決めたのは、甘えてしまう自分にケジメをつけるためだった。あなたの傍にいたらきっと、その優しさに縋ってダメになってしまうから。初めて自分で決めた午前零時十分発のバス。なけなしの荷物を抱えて思ったより広い座席に身体を押し込む。サヨナラ、大好きでした。いつかまた逢えたらその時は、胸を張ってそう言えますように。

    陽野へのお題は『深夜バスの旅』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    皆どうして忘れてしまうんだろうね? それとも見えないふりをしているのかな? キラキラ綺麗な光の裏側は、どうしたって同じ深さの闇が蟠っているんだって。今日の投稿についた『いいね』の数を眺めながら、細く紫煙を吐き出す。ねえ、もうやめようよなんて言わないで。今度はこの垢主を消して来て。

    陽野へのお題は『光と影』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    いつかお前が大人になったらな、って子供を黙らせるための常套句をいつも口にして、あなたはいつも本気をくれない。心変わりする気まぐれなんかじゃないの。半端な覚悟でこんなことを伝えるほど馬鹿じゃないわ。世間知らずだな、なんて鼻で笑ってないであなたが教えてよ。あなたの言う『いつか』なんて待ってたら、あたしおばあちゃんになっちゃうじゃない。

    陽野へのお題は『いつかっていつ?』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    「絶対見せたくない」なんて言うものだから、てっきり元カノと一緒に写った写真でもあるのかと思いきや、何と言うことはない。クラス写真で彼の名前が記載された上、不貞腐れたような表情を浮かべているのは、今とは似ても似つかない『ザ・陰キャ』男子。「大学デビューなんだよ」なんて同じ顔で口を尖らせるのが可愛いと言うのは黙っておこう。

    陽野へのお題は『卒業アルバム』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    この色が好きなの、と彼女のたおやかな指先がオレンジ色の花弁を優しくつつく。花屋なんて覗いたこともないから、百合にそんな色があるなんて知らなかった。強い香りが煩わしくはあったものの、彼女が上機嫌ならまあ良しとしよう。記念日でもないのに珍しく振る舞ってくれた手料理が並ぶ食卓。月並みな幸せも悪くないねと一口頬張った途端、俺の意識は途切れた。

    陽野へのお題は『花言葉』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    一緒に死んでくれとドスの一つも振り回されてようやく一人前、庇う必要なんてありゃしないのにアンタは平気で身を呈する。「すいやせん花魁、着物汚しちまいました」なんてそんなどうでもいいことを気にしてんじゃあないよ。大丈夫かぃ、なんて訊く素振りも見せられやしないけど、ああそうだね、奈落に向かって背を押され突き落とされるってのはきっとこう言う感じなんだろう。アンタと一緒なら地獄でもいい。

    陽野へのお題は『恋に落ちる瞬間』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    お前は本当にいい子だね、とあなたの大きな手が僕の頭を柔く撫でる。その温もりを愛情を慈しみを信頼を得るためなら、どんな難しいことだって大変なことだって出来るんだ。痛いのも苦しいのも好きじゃないけど我慢出来る。口に出来ないあなたの望みを僕が全部叶えてみせるから、どうか笑ってたくさん褒めて。

    陽野へのお題は『よくできました』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    思ったよりもショックを受けていない自分にショックを受けた。あんなに大好きで四六時中その想いに身を焦がしていた気がするのに、この人と結婚すると別の女性を紹介された時も、今こうして目の前で幸せそうに微笑み合う二人を見ても、胸の痛みはまるで湧かない。あなたの隣に立つ自分なんて想像もしていなかったから。投げられたブーケをしっかりと受け止める。そうね、いつかきっと私も二人に負けないくらいの素敵な恋をしてみせる。

    陽野へのお題は『恋じゃなかった』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    お姉ちゃんと一緒じゃなきゃ嫌だ、が妹の口癖だった。素敵なフリルがついたワンピースも、おやつのクッキーの枚数も習い事のピアノ教室も何でも真似してばかり。最初は可愛かったそれを、少しづつ疎ましく思い始めたのはいつからだろう? まるで双子みたいな姉妹ね、なんて言葉が一際煩わしくなったのは、そうあなたと恋人になってから。お揃いなんて出来る訳ないでしょう? ふざけないでよ。

    陽野へのお題は『お揃い』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    ゴメンね、と断りを入れられるのは何度目か。いつまでも待つよ、とは言ったものの正直彼女が頷いてくれる日なんて来ないだろうと思っている。義理立てだとかそう言うレベルの話じゃなくて、彼女の中では多分あの日のまま時が止まってしまったから。ズルいよなあ、と勝ち逃げしたまま今日も変わらず写真の中で笑っているお前を睨む。あれから二人歳を重ねて、今じゃすっかり追い抜いてしまったのに。

    陽野へのお題は『勝ち目がない』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    ふ、と覚えのある香りに思わず振り返る。雑踏ですれ違ったのは、彼女とは違う人だった。そりゃそうか……こんなところにいるはずもない。それに五年も前の話だ、きっと俺のことなんか覚えてないだろう。どうしたの、と怪訝そうな視線に何でもないよと歩みを再開する。記憶の一番深いところに眠る貴女みたいな香水を、隣の彼女は多分一生纏うことはない。

    陽野へのお題は『香水』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    酷いことをした、と言う自覚はあるんだね。僕を裏切り信頼を踏みにじり、
    この関係に罅を入れたと言う自覚は。ならばこそ、僕は君を許そう。ああ、許すとも。君はその罪を受け入れて貰えた、と言う十字架を背負って僕の傍にいるといい。次も、その次も、そのまた次も僕は君を許そう。どれだけ酷いことをしたとしても、君がその重さに押し潰されてしまうまで。

    陽野へのお題は『それでも許すよ』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    ええ、ええ、あなたの仰るとおり、起こった事実は導き出された結果は一つしかないんでしょうよ。覆らない、もう手遅れな現実は揺るぎなくそこに横たわるがままでしょう。けれど名探偵、何もかも知ったような顔で語るのはおやめなさいな。人の心の本当のところなど、誰にも解りはしないのだから。見る者によって千差万別、この悲劇の主役であった二人にもそれは永遠に解らないことなのです。

    陽野へのお題は『真実はひとつじゃない』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    起きたらいつも通りベッドは空。随分前に出たものか、シーツは冷たく乾いている。煙草の吸殻も飲みかけのビール缶も、どちらも嗜まないあなたは残すこともなく。そっと寝返れば、ほんの少しだけ鼻先を掠める自分のものではない整髪料の匂いだけが、昨日抱き合ったのは夢でも妄想でもない証。寂しい、なんて言えるほど初心にもなれなくてそっと布海に指を滑らせる。

    陽野へのお題は『残り香』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    地獄へ堕ちやがれ、なんて捨て台詞は聞き飽きた。てめえに言われるまでもなく、裁きを待たずに俺ぁ門の向こうに蹴り込まれるだろうよ。だけどそこでどんな責め苦を受けようと、今この現実を生きてる刹那と何が違うってんでぃ。妹の薬を買うために知らねえ輩を斬って斬って斬りまくって、俺の後ろにゃ死体が山積みになってらあ。いつ斬られて死ぬかも解らねえ、クソ親父が首括っちまったあの日から。

    陽野へのお題は『地獄』です。140文字SSを書いてみましょう。
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    ほら…はぐれちまうぞ、なんてさり気なく取られた右手にぎゅっと心臓がふるえる。そんなに子供じゃないわよ、と振り払うことは簡単なはずなのに出来なくて。あなたに他意がないのはよく解っているの。それでも嬉しいと跳ねるこの想いが、伝わって欲しいような気づかずにいて欲しいような。 今だけ独占出来るぬくもりをそっと握り返す。

    陽野へのお題は『手をつなぐ』です。140文字SSを書いてみましょう。
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