やあ、実に楽しいねと眼下の惨劇を見下ろしながら彼は笑う。炎がどす黒い煙と共に世界を焼き、銃声と剣戟の音がそれを彩る。怒号、悲鳴ーー我らが世界へ喧嘩を売った結果の破壊を子供のように無邪気に笑う。これはまだ反撃の狼煙に過ぎぬよ、我が主。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『屋根から見た終焉の世界』

    貴方に逢わなければ俺はきっと煙草の味を知らずにすんだ。背伸びして貴方の真似をして対等に肩を並べたいがためにふかした紫煙すら貴方は可愛いねえと揶揄うだけで。噎せた背中を撫でながらこうすりゃ手軽に味わえるとキスを落とす手管に犯されたい。
    お題bot* @0daib0t『あなたの愛で肺を汚して』


    街中すれ違いざま鼻先を掠めた煙草の匂いに思わずけほんと咳がこぼれた。僕の大嫌いな男がいつもくわえているのと同じ匂いに自然顰めっ面になる。珍しくはない品種のそれは嗅ぐ度にアレルギー反応を起こしたように咳が出る。今まで何ともなかったのにアイツに会ってから。胸糞悪いったらありゃしない。
    #一次創作お題ったー https://shindanmaker.com/633100 『煙草のにおいに咳一つ』


    速報ですと無機質な表情でキャスターが読み上げるのは僕の家族が殺された事件。なお警察では重要参考人として行方が解らない長男を…温度のない声が原稿を読み上げる。違うんだ、僕じゃない。僕は犯人じゃない。だからそんな文字の羅列に埋めないで。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『ブラウン管テレビに映るニュース』


    相変わらずお前は全てを受け入れると言う訳か、お為ごかしだなと全てを拒絶する彼は私を嘲う。どちらにしろまるで鏡に映したように正反対な私達は刃を突きつけ合うしかないのだろうか。救いたいと伸ばした手は払われ彼の凍った心には届かないままで。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『メラニズムの女神 アルビノの魔王』


    濡れた世界の中を色とりどりの魚達が泳ぐ。赤い尾灯の鋼鉄製、花柄、ストライプ、無色透明。手を伸ばせばその流れに紛れることは容易なのに臆病な僕は今日も内側から眺めるだけで電子の波に満足している。群れて傷つくよりも独りがいいと嘯いてぴちゃりぬるま湯にたゆたいながら。 #窓枠水槽 #創企


    先にオチるのはどちらかと酔った挙げ句の賭け事がまだ有効だなんて聞いてない。先程までただの親友だった男を見上げながら必死に逃げ道を探す。負けたくないと思うなら仕掛けるべきか、しかしこの状況をひっくり返すのは難しい。おまけにキスまで落とされてニヤリと笑う顔にやられた。マジになんなよ。
    #お題アンケ https://shindanmaker.com/601337 『2.所詮これはゲームなんだよ』


    お休みと頭を撫でる手もおいでと名前を呼ぶ声も優しくて暖かくてまだ戸惑いの方が強い。抱き締める腕もキスをくれる口唇も言葉にせずとも愛おしいと告げてくれるから恥ずかしくて顔が見れない。でもこの戸惑いも恥ずかしさも貴方が初めてでよかった。
    お題bot* @0daib0t『愛されることには、まだ不慣れで、』


    翻ったマントの目を灼く黒に立ち塞がった人物を知り思わず叫ぶ。「テメーが何でここにいる!?」正しきものに救えるものなど何もないとこちらに剣を向けたかつての友。受けた刃を捌きつつ「テメーを助けるためじゃねえ…俺の借りを返しに来ただけだ
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『土壇場で登場致しましたのは裏切り者のあの人でした』


    生温い雨が冷たくなった身体を穿つ。光が失せた無機質な双眸が俺の代わりに慟哭する鈍色の曇天を映していた。濡れて張りつくシャツが真っ赤な血に染まる。まるでその存在を丸ごとかき消し押し流そうとするかのように雨足が強くなった。ああどうかこれ以上俺から彼女を奪わないでくれ。 #梅雨空の詩


    やまないね、と空を見上げる君の長い睫毛に雨粒が乗っている。そんなに前に出て覗き込むからだと傘を傾けて視界を塞ぎ、そっと舌先で拭った。急激に温度の上がる簡易な密室は噎せ返る雨の匂いより君の匂いに満ちていて、ポツポツと急かすノックのような雨音ですらどこか遠くに感じた。 #梅雨空の詩


    深い闇の底はまるで時が止まったように静かだ。誰が来る訳でもないのに窓を開け放ちずっと何かを待ち続けている。一体いつからそうしているのかなんて当の昔に忘れてしまった。ノイズのような雨音に遮られ今夜も月は見えやしない。この水面に飛び出せば自由になれると知りながら。 #窓枠水槽 #創企


    やめろって言ったろと眉をしかめる肌には無数の赤い痕。こんなもので縛っても仕方ないと解っているのに誰からも触れられなくなればいいと詛うように何度も口唇を押しつけた。出来ることなら牙を立て縄の痕でも刻みたい。お前を捉えるためならいっそ、
    お題bot* @0daib0t『跡がつくほど強く抱いても、君はこの手から擦り抜けてしまう』


    命に代えても貴方をお守りします、と彼がひざまずき手の甲に誓いのキスをくれた日を私はずっと忘れない。もしも立場が違ったらもしも時代が違ったら、私は可愛く貴方の隣で笑えたのだろうか。叶えてはならない想いを抱いて、今日私は新たな王になる。
    お題bot* @0daib0t『永遠みたいな一瞬を、一生大事に抱えていたい』


    煤けた曇天燻る街はどいつも湿気た面をしてやがる。魂までも鈍色に腐り果てたか、堕ちるに任せて溝に塗れていくのか。それならそれで結構、惨めな負け犬のまま国に飼われて死んで行け。俺ぁそんなのごめんだからよ、ちょっくら花添えさせて貰うわ。
    お題bot* @0daib0t『街は今日も灰色』


    多分、そんなのつまんねえよと君は水面に石を投げながらふてくされたように呟いた。水を切って軽やかに舞う石は驚くほど遠くまで飛んで行く。あんな風に飛び跳ねられたらどんなにいいか…俯く頭が乱暴に撫でられた。絶対病気を治して帰って来い、と。
    お題bot* @0daib0t『君がいなくても生きられるけど、君がいる世界で生きていきたい』


    注がれる度身体が心が麻痺して囚われて行く。貴方が愛してると囁く度他の大事な何かがこぼれ落ちて行く。その指先に触れられる度魂が火照る。飢えて渇いて満足出来なくなってもっとと啼いて貴方を乞うの。汚されてももうこの愛なしには生きられない。
    お題bot* @0daib0t『毒に似た寵愛』


    終わりのない生が罰だと世界と言う牢獄に囚われた貴方は気紛れの話し相手に死なない人形である私を作った。そうして二人いつまでも繰り返しの日々を生きて行くと信じていた。けれど最近磨耗した身体が重い。もしも貴方一人を残すことになったなら、
    お題bot* @0daib0t『この身が錆びて いつか朽ちても、それでも愛してくれますか 、』


    星の水面に糸垂れて今宵は釣りと洒落込もう。ついと引かれて竿を上げれば銀河たゆたう君を捉えた。髪に絡まる針を取る際触れた頬の柔らかさに思わず鼓動が跳ね上がる。ああ、今ばかりは誰かの願いを叶えるためのこの身が恨めしい。私だって欲しいものくらいあると言うのに。 #twnovel #七夕


    どうも洋装は好かねえんだと言いながら朝顔柄の手拭いで軍靴を磨く旦那様は文明開化なんかクソ喰らえと言わんばかりに頑なに和装のままでいる。それでも寄る時代の波には勝てぬのかついにお勤めの服も洋式になり着流しの広い背中もどこか寂しそうだ。
    お題bot* @0daib0t『着流し、朝顔、靴磨き』


    ちゃんとした墓も掘ってやれずそれどころか五体満足な死体が少ない墓の山。個人を識別出来るのは折れて刃こぼれしたそれぞれの得物だけ。各々の願いを胸に闘い散ったその後に残るものは何もない。生きた証すら曖昧になってもせめて俺は覚えていよう。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『さようなら 戦友よ』


    貴方以外何も要らない欲しくない。一緒に来るかと問うてくれたその手を取った日から僕の細胞は一つ残らず魂すらも貴方のものだ。邪魔者がいるなら先に蹴散らし消せと命じられれば仲間すら屠る。ご主人様の仰せのままに。だからどうか僕を捨てないで。
    お題bot* @0daib0t『僕にとっての、世界のすべて』


    数多の命を奪った報いか戦争から戻ると同時に俺は身体が壊死していく奇病に冒された。治す術など無論ない。治すつもりも無論ない。少しずつ俺を蝕む病魔はもう両腕の肘から先を奪った。俺はあと何度守りたいと願った恋人を抱き締めてやれるだろう。
    お題bot* @0daib0t『密やかに朽ちる腕は悲しみを抱き締め』


    君は最期に魔法をかけた。自分の命と引き換えにこの世界を救う魔法を。ただ一人僕さえ殺せば終わる話の結末を書き換えた。人々の記憶から自分の存在を消すことで。「だって君がいない世界には何の価値もありゃしない」その笑顔もこぼれ落ちて消える。
    お題bot* @0daib0t『さよなら、僕の魔法少女』


    蓋を開けると回り出す歯車が、遠き故郷の地へ誘うように懐かしい曲を紡ぎ始める。箱の中には安っぽい虹色の硝子玉。あの日貴方が小箱と共に私にくれた。預けるだけだ、戻って来るまで持ってろと遠回しな告白を昨日のように思い出す。まさか結婚して何十年も経つ今も、持ってるとは思わないでしょうね。
    #もらったお題で140字SSを書く『オルゴール』


    「両手を上げろ!」開けたドアの先には自慢の水鉄砲を両手に構えるバカ息子。一度シカトしたら有り得ないくらいずぶ濡れにされたので大人しく従う。土産もねえのかクソ親父なんて嘯く憎たらしさに後ろで妻が笑っているがそれどころじゃない。小さくたって男は男、互いにしのぎを削るライバルなんだよ。
    #もらったお題で140字SSを書く『ドアの先には』


    こっちに視線くださいと何度もフラッシュが瞬く渦の中を歩く。ようやくここまで辿り着いた。でもこれはゴールじゃない、スタート地点だ。仲間と一緒に掴み取った夢の始まり。マイクを握り目を閉じる。客席のざわめきを切り裂いてイントロが流れる。心地よい緊張。さあ、このステージ思い切り楽しむぜ!
    #もらったお題で140字SSを書く『フラッシュ』


    大丈夫?なんて訊かないで。君以外誰も気付かなかった。私の体調が悪いことなんか。上手く隠してやり過ごそうと思ってたのに。どうして目敏く解るの?どうして無遠慮に額に触れて来るの?高まる衝動に理性が効かなくなる。このままじゃ駄目なのに。
    お題bot* @0daib0t『だから君が嫌い、』


    お前は必ずたくさんの赤い痕を僕に刻む。人目につく位置は止めろと促すも「マーキングだよ」とどこ吹く風だ。毎度脳内を犯すように鼓膜直下で愛を囁いてもまだ足りないのか。こっちは余所見なんてする間もないくらいお前でいっぱいにされているのに。
    お題bot* @0daib0t『鼓膜、犯す、マーキング』


    馬鹿だなあんな女のために、と吐き捨てれば彼はまあなと力なく笑った。その口元からいつもと同じに八重歯がこぼれる。お揃いね、なんて言われて調子扱いてピアスを開けて。仕方ないからその哀しさが薄れるまでは自棄酒も気晴らしも付き合ってやるよ。
    お題bot* @0daib0t『ピアス、哀しさ、八重歯』


    シャワーの水に押し流されて排水口に呑まれて行く情事の名残を見つめる君の目はいつも酷く乾いている。それは本来ならそんな始末をするものではないと体内に止めておけぬ憂いなのかいくら注いでも芽吹くことのない種子の代わりに君を強く抱き締める。
    お題bot* @0daib0t『どれだけの想いを注いだとしても、君は僕への愛を孕まない』


    コツコツ卵が中からノックされる音。まるで呼吸するように不気味な光が仄かに瞬きその度殻に罅が入る。やがてそれを引き裂いて血塗れで産声を上げたあなたの背には節張った真っ黒な翼。誕生と共に母を殺して産まれた我らが王は夜を統べるに相応しい。
    お題bot* @0daib0t『そしてあなたが孵る夜』


    私を壊さないように貴方は怖々とした仕草で手を伸ばす。その爪で肌を裂かれても、岩を砕く掌で頭を潰されても文句なんて言わないのに。餌の私を大切そうに慈しんでくれる。産まれてこの方他人の温もりを知らぬ私へ、獣の己を愛してくれと乞うように。
    お題bot* @0daib0t『躊躇いがちに 臆病に触れる、君の指先が愛おしい』


    それ、暑くないの?と指差されたのは真夏の太陽照りつける中でも外さない赤いマフラー。俺たちに寒暖なんて概念はない。死神だからねと答えればふーんと興味なさげな声が返る。あたし死ぬんだ、と他人事のように渇いた言葉が日除けの傘の中に響いた。
    お題bot* @0daib0t『マフラー、死神、傘の中』


    口付けで息の根を止めてそのまま舌を噛み切って。愛撫するように首を絞めてその感じてる顔が堪らなく愛しい。突き入れるのが鋼の刃じゃ冷たいなんて文句言わないで。濡れて融けた君の中を欠片も残さず愛してあげる。君の名残がいっぱいの部屋は処分。
    お題bot* @0daib0t『愛し合うように殺したい』


    眠れない夜は散歩に限る。こんな日はいい獲物が見つかるものだ。ほらあんなところを無防備に歩いている少女なんかすごく好みだね。持って帰って標本にして飾ったら部屋も賑やかになりそうだ。するりと袖口からナイフを掌中に落とし舌なめずりをする。
    お題bot* @0daib0t『標本、少女、眠れない』


    現代のシンデレラ、なんて誰もが羨むような結婚をしてもその後までが幸せとは限らない。物語が終わっても灰被りの人生は続いているのだ。仕事で飛び回る旦那は今日も帰らない。広いベッドを持て余す長い一人の夜は以前の下働きの方がマシな程退屈だ。
    お題bot* @0daib0t『退屈、ベッド、シンデレラ』


    黙って姿を消した君を追うことはその意に反するのかもしれない。でももう一度会いたくて、せめて元気でと伝えたくて世界中探すつもりで街を飛び出した。何年も探し続けてようやく見つけたその姿に、笑って名乗るつもりが懐かしさと安堵で胸が潰れる。
    お題bot* @0daib0t『やっと会えたねとわらいたいのに、涙ばかりが止まらない、』


    ここを取り壊すってんなら戦車でも持って来な。番傘片手にそう見得を切る青年に誰もが臆してそれ以上踏み込むことが出来なかった。どう言うことだ?この神社は長らく管理者がいなかったはず。彼の影がぞろりと蠢いた気がするのは目の錯覚に違いない。
    お題bot* @0daib0t『戦車、神社、番傘』


    どんなに愛していてもどんなに大事に思っても僕の身体は呼吸するのと同じレベルで人を殺す。差し伸べた手にはナイフを寄せた口唇には毒を。何の感慨も覚えず逡巡も迷いもなく君の命を奪える。後悔はするかも。だからどうか無邪気に僕に近付かないで
    お題bot* @0daib0t『きっと躊躇いもなく君を殺せる』


    パイプオルガンの鍵盤を叩く指に見蕩れていたせいで棺の中に花を手向け損ねた。ゆっくり遠ざかる嘗て恋人だった者を見送った視線とこちらを見ていた奏者の視線が交差する。美しすぎる笑みを浮かべたその顔は浮気者を殺してあげると囁いた死神と同じ。
    お題bot* @0daib0t『鍵盤、棺、交差する』


    尾鰭をくねらせて透明な巨躯がビルの谷間をすり抜ける。華やかなネオン瞬く摩天楼はさながら海底の珊瑚の群れか。巻き起こった突風に悲鳴を上げる者を笑うように見下ろして鯨は闇の中にダイブした。彼が時々この狭間に顔を出すことは誰も知らない。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『鯨が泳ぐネオンの街』


    熱下がらねえな。触れられた冷たい指先に平常より高い熱はさらに上がった気がした。彼がこんなに近い距離にいてくれることは稀有だ。いつもなら一定距離を保つくせに。心配そうな寄せた眉に悪いとは思いつつずっとこうして寝ていたいと感じた午後。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『風邪が長引いてくれるよう密かに願う』


    愛してくれなんて都合のいいことは言わないわ。私も貴方を愛してないもの。でも広すぎるベッドの冷たさに女を独り震えさせておくなんて随分酷い男ね。私そんなに魅力ないかしら?キスはくれなくていい。女だって違う熱に酔って眠りたい夜もあるのよ。
    (創作向けお題bot) @utislove『せめて忘れさせてくれても、いいじゃない』


    強がりだと解っていてもお前に助けを求めることだけはプライドが断じて許さなかった。誰がつけたか『無敵に素敵』なキャッチコピーを必ず馬鹿にされるからだ。剣を支えにして辛うじて立ち上がる。ニヤニヤ意地悪く笑う面にパンチする余力はあるぞ!!
    お題bot* @0daib0t『強がり、プライド、キャッチコピー』


    僕のお嫁さんになって下さい。幼い日貴方が野原で差し出したのは不器用な指で作ったタンポポの指輪。無邪気な笑みに私は何と答えたのだったか。そして今日同じ台詞でちゃんとしたダイヤの指輪を差し出す貴方。はにかむような赤い頬もあの日とは違う。
    エフェメラ@お題bot @ephemera_odai『タンポポの指輪(Orange Sherbet)』


    私安くないわよと彼女はジャケットのポケットから銀色のシガレットケースを取り出した。その表面には鮮やかな模様の蝶が刻まれている。中から指先が摘まみ上げたのは細い煙草。くわえて火をつける優雅な仕草に目を奪われた。「それで誰を殺したい?」
    妄想世界@手動お題 @moso_propro
    『蝶のシガレットケース』

    7月25日
    言葉に出したことはないが互いの領分には口出ししない。それが俺たちが対等であるためにあり続けるために無言で敷いた境界線のはずだった。越えるな。触れるな。慣れ合うな。今更余計なものを抱え込むのはゴメンだ。大事なものを持って弱くなるのはゴメンだ。なのに何故お前は無防備に踏み込んで来る?
    #お題アンケ https://shindanmaker.com/601337 『4.これは暗黙のルールでしょう?』


    いいわね、誰が来てもこの扉を開けては駄目よ。息も声も気配も殺して隠れていなさい。そう残された真っ暗闇で誰かが助けてくれるのをずっと待っていた。時折聞こえる轟音や悲鳴を聞こえないフリをしながら縮こまって丸くなって己の世界を閉じたのだ。
    エフェメラ@お題bot @ephemera_odai『そして彼女は扉を閉じた(Grape Sorbet)』


    助ける必要ないでしょう!泣き叫び咆哮する加害者を後目にメスを取る。確かにこいつがしたことを思えば百回殺されたって文句は言えない。奴の気持ちはよく解るがだからってこのまま見過ごせはしない。俺は医者だ。目の前の人間が苦しんでいたらそれをどうにかしなきゃならねえ。例えどんなクズでもだ。
    #お題アンケ https://shindanmaker.com/601337 『2.この手はなんの為にあるのか』


    これも廃棄処分だと前世界の欠片がまた一つ僕の引く荷車の上に放られる。片付けてもすぐ山積みになるガラクタで地面に大きく穿たれた穴もじきに埋まってしまいそうだ。耳障りな音と共に奈落に落ちる欠片を見下ろすと一輪足元で白い花が揺れていた。
    お題bot* @0daib0t『世界、一輪、廃棄処分』


    ぴたりと耳をつけた貴方の背中はもう抱き合った熱が醒めてしまったように冷たい。それでもとくとくと心地よく鼓膜を打つ心音は私を酷く安心させる。ねえ、いつまで私はこれを聞いていられるかしらなんて野暮ね。誰にも渡すつもりはないから今ここで。
    エフェメラ@お題bot @ephemera_odai『背骨越しの心臓(Maple Sweet Potato)』


    僕の初めては全部君に上げた。まだ目も開かない頃から傍にいてくれたのは世界でただ独り君だけだったから。注がれる愛も慈しみも全てそのまま捧ぐ。大きくなったねと僕を見上げて笑う口唇をキスで塞いで、ああそうだ僕の知る世界の全ては君そのもの。
    お題bot* @0daib0t『君しか知らない、君しか見えない、君しか要らない』


    もう生業には出来ないと銃を置いたのは片目の視力を失った四十半ばのことだった。本当は後悔している。まだ続けたいと叫ぶ心を押し殺し微温湯に戻ったことを。だからだろうか、近頃見る夢はいつも全盛期の自分だ。相棒はもう錆びて使えやしないのに。
    お題bot* @0daib0t『錆びついたトリガーは夢の中で』


    君、それ以上踏み込んではいけないよと言う声に振り向けば塀の上で寝そべる一匹の猫。人のままでいたいならそれより先に行ってはいけない。世界には超えてはならない理があるのさ、といかにも知った風な口を利く彼。ふと見遣ったその影の尾はゆらり二つに分かたれていた。 #私のことを君と呼ぶ野良猫


    本当にいいんですねと念を押す彼は静かな笑みを浮かべている。もう後戻りは出来ませんよなんて言われなくても戻る道などどこにもない。帰る場所などどこにもない。ならばこの手を血に染めても全てを奪った奴に復讐する。あたしは今日人間を卒業した。
    青色狂気(お題bot) @odai_mzekaki『永劫、血塗られた不老不死の確約を。』


    必要なのはオッドアイ。左右色の違う瞳には生来魔力が宿っているのだと言う。後の材料は残らず揃った。でもなかなか探してみると見つからないもんだ。手にした鋏をくるくると回す。ボトルに入った他の目玉はいずれも同じ色のノーマル。君、知らない?
    お題bot* @0daib0t『鋏、ボトル、オッドアイ』


    大嫌いとそっぽを向くその横顔に説得力はまるでない。そうか、仕方ないから帰るよと立ち上がれば張り続ける意地がぽろりと雫になってこぼれ落ちる。君はそれを私には見せまいと俯いてしまうから敢えて追求はしない。その代わりまた来るよと嘘つきな君が素直になれるよう手を伸ばしておくのを忘れない。
    #お題アンケ https://shindanmaker.com/601337 『2.嘘つきの君へ』
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