#twnovel 人生の分岐点で振る賽子を手に入れた。優柔不断な僕には最適なアイテムだ。迷う度に賽子を投げ示された通りに生きる内気づけば人生は望まない方向に転がり始めていた。それでも長年賽子に全てを委ねて来た僕は今さら自分で選択出来ない。今目の前には崖。奇数が出たら飛び降りる。


    #twnovel いつかここから出して上げる。僕が迎えに来て上げる。そう言って貴方は指切りして行った。その日を夢見て一体どれくらいの月日が過ぎたことでしょう?貴方は来ない。まだ来ない。それは絶望よりもまだ深い、まるで黄泉路のような希望。夢見た分の夜の数だけ針を送っていいかしら。


    #twnovel はい、これで寂しくないだろ?なんて熊のぬいぐるみを置いてあの馬鹿が海外へ行ってから一週間。何なの全く解ってない。これは貴方の煙草の匂いもしないし暖かくだってないじゃない。本当大嫌い。私が欲しいのは無気力なモフモフの腕じゃない。こんな軽さ、と睨みながら今日もまた。


    #twnovel 「あの人とは趣味が合わなくてね…目玉焼きに何をかけるかで毎朝喧嘩したものだわよ」祖母が祖父のことを語る時は必ずこの話から始まる。でも過去を見やる目は優しくて、決してそれが憎い感情から来るものではないことを窺わせる。そして今日はいつもの醤油ではなく塩をかける祖母。


    #twnovel この世には夢や希望なんてない。いじめっ子が今日も僕を追い回す。僕は先日貰った正義の味方を呼ぶスイッチを押した。「や、やぁ呼んだかい?」目の前に現れたのは真っ裸のオッさん。場の空気が凍る。そりゃヒーローだって風呂くらい入るだろうけども。こんなの知りたくなかった。


    #twnovel 「疲れた。抱っこ」そう両手を伸ばせば戸惑ったような渋面に顔を歪めながらも、その場に黙ってしゃがみ込んでくれる。その背中に勢いよく負ぶさると潰れた声がした。立ち上がりぐんと視界が開ける。でもそれよりも、今まで知らなかったこの温もりが何より嬉しいなんて言わないけど。


    絆なんて面倒臭いもの遙か昔に全て断ち切ったはずだった。なのに何故俺は今この温もりを背負っている?うるさくて迷惑で冗談じゃないと思いながら文句を言いつつ放り出せないのは何故だ。守っているつもりで守られて救ったつもりで救われているのは認めたくないが多分俺の方なのだ。 #twnovel


    貴方が全てをくれたから貴方に全てを捧げたい。この機械仕掛けの心臓はいつ止まるとも知れずどこまでお仕え出来るか解らない。僕が止まっても決して泣かないですぐに棄てて下さいね?そう言うと貴方は何も要らないからずっと傍にいろと不機嫌顔になってしまった。…何て難しい命令。 #twnovel


    今日は空が青いから素敵な花の匂いの風だから太陽の光が暖かいから自殺しようと貴方が笑う。こんな日なら無事に天国へ逝けそうだと。でもそう言えば録画していた映画を見ていないから明日でいいか。そして結局君は陰鬱な雨の日に死んだ。どこへ行こうと言うの空の身体だけを殺して。 #twnovel


    どれだけ時間がかかろうとどんな姿になってでもきっと君の元へ帰る。だから必ずあの木の下で待っていて。そんな死亡フラグを立てたまま彼は戦争へ行った。あれから七十年、一体いつまで待てばいいのやら、と暢気な面影が脳裏を過ぎった時季節外れの蛍が飛んだ。待ちくたびれたわよ。 #twnovel


    俺は世界一の名探偵。だが出かける度事件に遭うことに遺憾を覚えこの度引きこもることにした。それでも依頼のメールと電話が止むことはない。今日も自室で真相のメールを作成していると、地震で堆く積んだ資料が雪崩を起こして私は死んだ。何てこった私が自ら謎を作ってしまうとは! #twnovel


    「貴方が落としたのは可愛い彼女?それともきれいな彼女?」生憎とうちの彼女は可愛くもきれいでもなかったので、交換してなんて思いがちらついたのは否定しない。けれどこの魔女はそうやってお気に入りを湖に引き込み自分のものにする。いい加減自分がなくしたものに気づきやがれ。 #twnovel


    この世界は神様が作ったからこそ無慈悲で残酷で不平等だ。「今日はこことここを戦争させよう」清廉無垢な天上界に娯楽は少ない。争いも憎しみも持ち込めない。だから神様はそれぞれ作った箱庭で創作物に試練を与えて弄ぶ。その気まぐれな指先から逃れるには箱から出るより他はない。 #twnovel


    僕の仕事は涙と共にこぼれる悲しみの欠片を食べること。あちらでぽろり、こちらでころり。今日もあちこちにたくさん落ちている。苦くてしょっぱくて美味しくもないそれのおかげで僕の身体は随分大きくなった。それでも僕は欠片を食べ続ける。世界が悲しみに埋まってしまわぬように。 #twnovel


    この線路を越えたら一度も足を踏み入れたことのない隣町。夕闇に暮れなずむ景色は、まるで僕を拒絶せんばかりの顔で佇んでいる。ああ、こんな都会にも深い森が存在することを今日初めて知った。君がどの辺りに越したかも知りはしないと言うのに。たかがこの境界線一本の距離が遠い。 #twnovel


    彼女は誕生日が来る度に生まれ変わる。一年に一度まっさらな自分に生まれ変わる。それまでの古い自分を脱ぎ捨ててそれまでの記憶全てを投げ捨てて。月夜の下で咲く彼女を僕はもう何年も見続けている。「貴方は誰?」例え君が何度僕を忘れても僕はずっと君を愛す。君が僕を殺すまで。 #twnovel


    記憶の一番深い部分と繋がっている『匂い』は厄介なものだ。ふとしたきっかけで扉が開かれ幾重にも出来た瘡蓋が剥がされる。あの喪失の痛みとはとうの昔に折り合いをつけたはずなのに。「もう要らねえと思ったんだがな…」そう独りごち煙草に火をつける。嘗て彼が好きだったそれを。 #twnovel


    僕は図書館に住んでいる。月のきれいな晩は、僕だけしかいないはずの夜闇の空間が少しだけざわつく。その光に誘われて本たちがひそひそと喋り始めるからだ。漣のようなうねりが辺りを満たして行くのは嫌いじゃない。それは誰も知らない終わったはずの物語の終止符の向こう側のお話。 #twnovel


    いつも振り向かず先を行く広い背中。私は彼に守って貰ってばかりだけど、本当はその隣を歩きたいことに気づいているのかしら。私がいなくなったらちゃんと気づくのかしら。ふと思いつき足を止める。次第に開く距離。しばらくすると盛大な溜息が聞こえた。「何してんだ置いてくぞ!」 #twnovel


    彼の笑顔を唯一見たのは、最期の瞬間だったように思う。本当はもっと笑っていたはずなのにどうしても思い出せない。「これでお前も解放されるだろう?」共に生きてくれ、と言う言葉を飲み込んだ。そんなことを願う資格はない。あれから十年ーー空いたままの空白は未だにそのままだ。 #twnovel


    もふもふもふ。柔らかな毛は撫でられ人々に癒しを与えるためにある。けれど四六時中所構わず触られ続ける身としては、今の状況あまりいただけない。毛を刈って好きに愛でればいいさとみんなにバラまけばそれはタダのゴミにしかならなかった。おかげで僕はのんびりご飯が食べられる。 #twnovel


    雨の音が耳に痛い。傘も差さずに佇む墓の表面には特に誰の名前も刻まれていない。罪人の俺の名など刻めないからだ。それでも毎日足を運んで花を活けてくれる人の存在を俺は知っている。特に好きでもない甘いものを備えてくれる奴のことも。なあ、本当は生きているのだと言えたなら。 #twnovel


    プレゼントを選ぶのがエラく下手だ。何が欲しいのか何を送れば喜ぶのかさっぱり解らない。仕方なしに随分迷った挙げ句前に好きだと言っていた花のブローチを送る。出逢ってから五十回目の誕生日おめでとう。「私のために使ってくれた時間が嬉しい」と笑う君はあの頃から変わらない。 #twnovel


    もう二度と逢うことは叶わないと思っていた。それがまさか、また共に戦線に立てるなんて。「ご一緒出来て嬉しいです。またよろしく」そう弾けるような笑顔で駆け寄って来るお前が相変わらず苦手だ。守りたいものを大事にする方法なんて、武器である俺に誰も教えてくれなかったから。 #twnovel


    私のことを忘れないでね、と笑った貴方のことをこの鮮やかな紅を見る度に思い出す。道端に連なる曼珠沙華。それはまるで貴方へと誘う呪いの道なりだ。生まれ変わって逢いに行くからまた会う日を楽しみにしているわ、と。この季節があと何度巡ればその言葉が真実だと思えるのだろう。 #twnovel


    僕と一緒に来るかい?と言う言葉は今思えば悪魔の囁きだったのだ。それでも突然用済みだと処分されかけた身には途方もない誘惑だった。機械は必要とされねば死ぬ。意味や善悪など自分には関係ない。「世界の敵になるってのは、なかなか粋な試みだろう?」全ては貴方の御意のままに。 #twnovel


    行って来ると優しい口付けを落として出て行く背中を今まで何度見送っただろう。本当は行かないでと袖を引きたいのを堪えて行ってらっしゃいと返す。貴方が帰って来ると言うのならここでずっと待っている。傷を負って来ようものならこの檻に鍵をかけて閉じ込めるから覚悟しておいて。 #twnovel


    ご褒美だよと笑う口唇に思わずごくりと唾を飲んだ。大したことはない。差し出されたのはバラエティーパックのクッキーの小袋。深い意味なんかないことは知ってる。ただの労いだってことも、年下に興味ないことも、意識してるのは俺だけだってことも。この焦燥が悔しすぎて今日もまた、 #twnove


    深く深く沈んで行く。もうどんなに手を伸ばしても戻ることは叶わない。そもそもそうして手を伸ばす力すら残されていない。絡みつく水の重みがなかろうと、心が折れた剣は二度と立てない。大事な人の名前を呼びたかったが彼ももうこの世にいない。全てを闇に委ねて眠れ、この海の底で。 #twnove


    どうせこのまま連れ帰られても、殺処分されるだけならお前に斬られた方がいい。お前にはそうするだけの資格があるし、何よりきっとお前は俺を忘れられなくなるだろう。初めて斬ったものとして生涯魂に刻まれるだろう。最悪だ?ああそうだよ、俺はお前に取って最初から最期まで最悪だ。 #twnove


    耐え難いこの誘惑に我ながらいつもよく勝っているものだと感心する。だが人目のない今なら誰にはばかることなく自らの欲求を叶えられるだろう。眠る少女に手を伸ばしその白い肌に指を這わせた。柔らかな感触を堪能していると責めるように目が開く。「ほっぺた、伸びちゃうじゃない」 #twnovel


    この身が斬られて痛いのは一時だけだ。それより一等痛いのは本当に大事なものを守る術がないと己の無力さを突きつけられること。目の前でそれを壊されること。けれど後悔より先にすべきことがある。吠えろ立ち上がれ。俺にはまだ二本の足がある。刀を握る腕がある。さあ獣よ牙を剥け。 #twnove


    仇を討ちたいと思わないのか、と問うと、男は苦笑しながら杯を傾けた。「そんなことしたら『俺がせっかく格好つけて死んだのに無粋な真似をするな』って叩き斬りに起きて来るだろうからな。あの人は武士として死ねた、それで充分なのさ」残された身として背負った業すら肴にして笑う。 #twnove


    あの時君に好きだと告げなかったことを今更ながらに後悔している。もし立場だとか世間体だとか全てを取っ払って想いを伝えたなら、君は今頃僕の隣で笑ってくれていただろうか。拒絶されることが怖くて諦めるくらいなら、いっそ君を浚って逃げれば良かった。さよなら青春、大好きな人。 #twnove


    僕はあの人の刀だったんです。棒切れ一つでその夢を叶えるために道を切り開いて来た。立ちふさがる敵も困難もねじ伏せて、邁進する傍を片時も離れたことはなかった。例え血に汚れ罪にまみれても義を貫く背中に誇りを持っていた。だから身体が無事なら最期まで共に歩みたかったんです。 #twnove


    いつもご飯を上手く作れない。味じゃなくて量的な意味で。ほら、今日もまた作り過ぎたおかずを持て余している。彼が向かいの席に座ることはもう二度とないのに。味付けは少し濃いめが好きだったとかこれは美味しいと言って貰えたとか、そんな女々しい自分からいい加減卒業したいのに。 #twnove


    負けて負けて負け続けてこんな所まで来ちまった。死に損ないもここまでくればいっそ才能かも知れない。数多の仲間の屍を踏み越えて、それ以上の敵の死体を踏みにじって来た罰に死ねぬ呪いをかけられたのか。ああ、最近ようやく生き続けねばならない期待の重さって奴を知ったよ、大将。 #twnove


    青白かったり黄金だったり赤だったり日によって月の色が違うのは大気の影響なんだそうだ。そう風流なんかクソ食らえな話をすると隣で杯を傾ける相手は醒めた眼差しを投げて来た。「理由なんて『テメーと飲みたい』ってだけで充分だろ」月がなければ花でも雪でも隣にお前がいるだけで。 #twnove


    今夜は空いてない、約束がある。そう言って笑う彼の隣にはもう一つ酒で満たされた杯。誰が来る訳でもないのに静かにきれいな満月を愛でるのは、決まって空気の澄んだ秋。その指定席にはずっと昔から今は亡き大事な人が座るのだろう。律儀な彼に想いの鎖ーー呪いをかけた貴方を恨む。 #tw月の友15


    「今夜敵は来ませんよ、明るすぎる」そう言われて初めて今日が満月だったことを思い出す。「隊長もこっちで飲みましょう」今頃お前もいつもの部屋でこの満月を見上げて、団子でも食べているんだろうか。違う空の下、同じ月を。そう思うと無性に逢いたくて一刻も早く帰りたくなった。 #tw月の友15


    裏切られるのは計算の内だった。寧ろ進んでこの牙城に飛び込んで来た無謀を褒めてもいい、とすら思う。殺し合いの口実なんか何でもいい。どちらにしろ最後に立っていた方の勝ちだ。義だの忠だのいくら振りかざしても結局残るのは相手の血で汚れた誇りと屍だけ。虚しいとは言わないが。 #twnove


    貴方の隣で死にたかったと言えば、今でも馬鹿野郎と罵声と共に蹴りが飛んで来そうな気がする。だってそうしたら優しい貴方は数多くいた部下の中でも、少しくらいは強い印象で私をずっと覚えていてくれたでしょう。今こうして私が貴方を忘れられないように。目の前の墓は何も言わない。 #twnove


    想いの強い刀傷はいつまでも消えぬと昔から言う。だとしたら、この死に損ないの腹の傷が未だ鮮やかに刻まれているのはそれだけ己の矜持が強かった証なのか。「いいかテメーらよく見ろ!これが…」「はいはい、解ったから。もう見飽きたから」酔った時くらいいい気にさせろよ馬鹿野郎。 #twnove


    生き物は生まれた時から生涯打つ鼓動の数が決まっているらしい。だから小さい生き物ほど鼓動が早く心臓が忙しなく動くんだそうだ。そんなに急がなくていいよ。もっとゆっくり君と生きたい。今は掌サイズにまで縮んでしまった恋人の頬をつつきながら、穏やかにそんなことを考える午後。 #twnove