耳の奥に時折蘇る遠い記憶。坊や、心配ないわお眠りなさい、と唄う女の穏やかな声と、優しく髪を撫でられる感触。暖かな陽だまりの匂い。そんな平穏な暮らしがあったことも忘れていた。あの頃の俺が今の姿を見たら、どう思うだろう? あの手を幸せを振り払い進んだ道は、こんなにも血に染まっている。
    妄想世界@手動お題(@moso_propro)『もう聞こえないララバイ』


    そう言うことを口にするの苦手なのはよく知ってるし、きっと正面切って言われたら、私も照れ臭くて茶化しちゃうんだろう。でもたまには聞きたいなんて我儘言うと、「そんな言葉じゃ足りねえだろ」と鼓膜直下に低音ボイス。ああ、いつからこんなに欲張りになったんだろうなんて、熱くなった頬に触れる。
    貴方は閃ミツで『愛してる、って言ったら満足?』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
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    最初はほんの好奇心、自分がどこまで通じるのか試したかった。一線超えるのは訳なくて、一歩ずつずぶずぶと足を取られるままに溺れて行った。いつしか頭の天辺まで浸かっちまって、もう今さら引き返せやしないところまで堕ちちまったよ。後悔? いやそもそも最初はどんな風に生きてたか忘れちまった。
    scaldお題bot(@_scald_)『悪の深みへ』


    ここをお前と通るのも今日が最後だな、なんて君がぽつり言うものだから、急に寂しさが込み上げた。保育園から十数年来の幼馴染とは進路先が違う。いつも一緒に探検したり道草しながら帰った道も、今度は別々バラバラだ。一人は、不安。何かあったらいつでも呼べや、と笑う君がいたから頑張れたんだよ。
    お題bot*(@0daib0t)『道草、進路、幼馴染』


    長年追いかけていたその背中を、ようやく超えたと思ったんだ。目に見える形で勝利して、練習を重ねた技術が物になって、高かったはずの分厚かったはずの壁をようやく超えたんだって。なのに上にはまだ上がいて、辿り着いた先は頂上なんかでは全然なくて、あといくつ超えて行けばそれは見えるんだろう?
    キミが映る水溜り(お題bot)(@kimiutu_bot)『壁の向こうは壁』


    俺は何でも持っていて、才能にも見た目にも恵まれていて、望めば叶わないことなんて何一つないと思っていた。当然言い寄る相手も数知れず、誰もが「貴方のために」「愛してます」と繰り返す。ただ一人、一瞥だけくれて「下らない人」と踵を返したお前以外。知ってるよ、俺はしょうもない。だからお前が
    空色@お題bot(@sora_odai)『誰のよりも聞きたかった言葉』


    お帰り、と笑顔で出迎えられるのにただいま、と答えられるまでしばらく時間がかかった。コーヒーの減りが早くなったし、増えた自分のじゃないものが占める割合とか、二度寝が多くなったとか。当たり前を手にするのは怖かったはずなのに。隣にお前がいるだけで、ただただヒトでよかったと思うんだ。
    貴方は閃ミツで『ありふれた日常の中の幸せ』をお題にして140文字SSを書いてください。
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    兎は寂しいと死んでしまうなんて話はどうやら嘘で、僕の家を吹っ飛ばさんばかりに落下して来た未確認飛行物体からヒールを高らかに鳴らして降りた彼女は、「384,400km向こうから迎えに来て上げたわよ、ダーリン」といつもの勝ち気な笑みを浮かべてみせた。ああ、全くその距離すらも些細なことだ。


    何の代償もなく叶えられる願いなどない。ましてやそれが埒外の人外であるなら尚更だ。あいつを地獄に送ってくれ、と言った僕にそいつが提示したのはこちらの心臓だった。ああ、いいさ。死ぬ勇気もやり返す勇気もない僕には似合いの結末だ。穴を掘ろう。出来るだけ深いのを二つ。無様を晒さないように。
    宵闇の祷りお題bot(@yoiyami_inori)『人を呪わば穴二つ』


    閃ミツへのお題:てのひらに飴玉/「失敗作ですか」/かわいく言ってもダメ
    #shindanmaker
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    明確に禁煙し始めた訳でもないけど、煙草の本数が減った。なるべく傍では吸わないように。そうしたら今度は口寂しさが募る訳で、無意識の内に目がミツキの口唇を追う。あー噛みつきてえ、なんて思ってたら、不穏な気配を察してか「はい」と掌にイチゴ味の飴玉が乗せられた。速効噛み砕いて本命を貰う。

    らしくもなく大慌てで背後に隠すものだから、何かと思えばそこには形の崩れたケーキがあった。手先は器用、を自負してたし、実際料理はそこそこ上手な方だと思う。でもお菓子作りは勝手が違ったのか「失敗、した……」と不貞腐れた赤い顔。欠片を摘んでぱくりと一口。ちゃんと美味しいよ、ありがとう。

    「お願い」と上目遣いで言われたら、大体のことはOKするし、嫌とは言わない(そも言われたことはないが)。けど、どうしたってこれだけは、断固として譲れない。妥協は出来ない。可愛く袖を引かれても、絶対ノーと言ってやる。「全部かけていいでしょ閃光」とレモン片手のミツキから唐揚げを遠ざける。


    最後までお供出来ずにすみません。今にも途絶えそうな息の下からそう言う貴方の腕はもう、ない。深い傷から流れ出る命の証、虚ろな目もきっと私を映してはいないだろう。貴方は充分尽くしてくれた。私を守る盾として、剣として、代わりに何もかもを引き受けて。今までありがとう、感謝してる。だから
    お題bot(@tokinagare)『もう、休んでいいのよ』


    父と母が揃って事故死した時、二つ下の弟は霊安室で声を上げて泣いた。私は泣いてはならないと涙一つこぼさなかった。しっかりしなければ。悲劇は事実で現実で、これからどんなに辛くとも二人で生きていかなければならないのだ。葬儀や何やら忙しい日々が落ち着いた時弟が言った。「もう泣いていいよ」
    揺蕩う言葉@お題bot(@tayutau_kotoba)『泣かない強さと泣けない弱さ』


    人生それほど長く過ごしてなくたって、生きてりゃ誰かに何かに影響する。他愛ない言動がいつもの癖がただその場の気紛れが、どんな奇跡を絶望を生むか解りゃしない。だから目の前で怪しい女が落として行ったハンカチを拾うべきか否か、俺は心底悩んでいる。届けても、届けなくてもいいけれどこの際だ、
    お題bot@GHQ!!(@GHQkitakubu)『ちょっとそこまでフラグを折りに』


    あたしがスナイパーってのはそんなに可笑しいかぃ?見えない剣豪だっていやがるんだ、銃が撃てない道理はないね。あたしに言わせりゃスコープ越しの景色の方が本物なのかぃって話さ。そいつに頼ってばっかで、結局自分じゃ見えやしないんだ。同じことだろ。辿る気配が全てさ、三、ニ、一ってなもんだ。
    無音(お題bot)(@nothing_glass)『盲目のスナイパー』


    貴方に似合うよう、隣りにいても自然なよう、精一杯背伸びをしているのです。わたしは子供で、知ったかぶりをしているだけで、本当は何も解ってなどいないのです。それでも貴方に相応しくありたい、ほんの少しくらい興味を持って貰いたい、ままごとみたいな見せかけでも、素敵だと言って欲しいのです。
    きみとわたしと(お題bot)(@kimito_odai)『生意気ですか?知ってます』


    ここで待っていろ、貴方がそう言って姿を消してから一体どれくらい経ったでしょう? ある人は捨てられたんだよと憐れみの視線をくれ、ある人は家においでと声をかけてくれたけれど。寂しいです。お腹が空きました。けれど貴方は決して約束を違えたことはないから、必ず戻ると言ったその言葉を信じて、
    創作お題bot(@sousakuODAI)『いまでも此処にいます、いまでも貴方を待っています #創作 #お題』


    決して抜けない棘を植えよう。傷はいつか瘡蓋になり、癒えて塞がってしまうから。貴方の心の奥の一番やらかい場所にそっと、深く。治る時飲み込まれるように、決して忘れ得ない毒の棘を。貴方は優しい人だから、きっとずっとそのじくじくと膿む傷みを悼みを抱えて生きてくれる。私を唯一にしてくれる。
    バルキュリアの囁き(お題bot)(@blwisper)『死することそれがすなわち彼の中で生き続けることになるならこの命ですら』


    健やかなる時も病める時も彼女を愛すると誓って数十年、遺して逝くのが寂しいのは私の方かもしれない。贅沢なことはさせてやれなかった、仕事ばかりで苦労をかけた、大切だと伝え続けたつもりだったけれど、ケンカも多かった。毎日、毎年、重ねた日々を手放す時になって、かけがえなく愛おしいと思う。
    無音(お題bot)(@nothing_glass)『君は幸せだったかい?』


    心底信じ難い、と言うように驚愕で双眸を見開くお前の顔を見て、してやったりとはこう言う気分なのだと初めて理解した。死んだと思った? まぁ実際川向こうで亡き婆ちゃんが手を振るのを見るくらいにはヤバかったけど、俺ちゃん死ぬと困るだろう? ピンチに駆けつけてくれる奴、他にいないだろうし。
    創作お題bot@理想幻論(@asama_sousaku)『やぁ、元気だったかい?』


    大人になったら行けなくなるの、心が汚れてしまうから。そう繰り返し口にして夢見た場所へ、君はひとりで旅立ってしまった。残されて綺麗に揃えられた靴は、僕だ。何故一緒に手を取って連れて行ってくれなかったのか。あの日から今も君は変わらぬまま十余年、僕はもう君に会いに行くことすら叶わない。
    ぽつぽつ(お題bot)(@potsuri200)『ネバーランドで会いましょう』


    一つ、呼吸を整えて一歩踏み出す。次第に速くなる足が大地を目一杯に踏み切り、手にしたポールだけを頼りにぶわりと身体が宙を舞う。躍動、静寂、陽光。バーを躱すその一瞬の無重力に、お前は何を思うのだろう。宇宙遊泳のようなスローモーション。レンズ越しにでも解る、クリアを確信した時の、笑み。
    蝋梅bot(お題)(@roubaititle)『しなる背の美しさよ』


    これは呪いなんだよ、と彼は自嘲する。世界の全てを知ろうとした、その報いなのだ、と。理を変えようとした、その代償なのだ、と。結果、彼は彼女のいない世界を何度も何度も繰り返さねばならない。その想いはそれほど罪であったのか。その願いはそれほど罰が必要か。彼ほど孤独な人を、僕は知らない。
    お題bot*(@0daib0t)『魔法使いは永遠を巡る』


    すーすーと寝息を立てるお前を起こさないように、ネクタイを締めて上着を羽織る。おはようを言い損ねた、と目を覚ましたお前はむくれるかもしれないけど、まだそんな甘い空気を味わえる余裕はない。無防備な頬をそっと突いて、先に部屋を後にする。曲がりなりにも犬猿の仲だった。もう少し時間をくれ。
    診断メーカー紹介&お題bot(@todomaguro0)『シチュお題
    シチュ:朝帰り テーマ:寝顔』


    その色は君に似合わない、じゃなくて『僕の恋人に相応しくない』でしょう? 貴方色に染まるつもりはさらさらないの。清楚、貞淑、初心の三拍子揃って、亭主の影を踏まぬ三歩下がったオンナが好みなら、どうぞ他を当たってちょうだいな。私は好きな私を譲れない。可愛くなくて結構よ。ごめん遊ばせ。
    departure(お題bot)(@dpt_title_bot)『つめさきに赤を #お題』


    日付も変わる頃に着信があった。こんな時間にかけて来たのは初めてだ。何かあったのか。一気に血の気が引いて、慌てて通話ボタンを押す。どうした、と勢い込んで訊ねれば、俺がそんな反応をするとは思ってもなかったのか、小さく笑いが溢れた。しばらく声を聞いてなかったから、なんて心臓に悪い。
    陽野あたるさんは【おやすみって言いたかっただけ】をお題にして、140字以内でSSを書いてください。
    #shindanmaker #140字でSS
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    いつまでも色褪せることなく、君は音楽に合わせて舞い、歌う。シトリアスの薔薇、と呼ばれた名前をほしいままにしていた、誰も右に出る者などいなかった、その圧倒的な存在感。楽しくて、嬉しくて仕方ないのだと言わんばかりに、生命力漲る美しい我が娘。一発の銃弾が全てを奪ったあの悪夢の日までは。
    (創作向けお題bot)(@utislove)『カメラのむこうでだけは、笑っていて』


    この世の邪悪を罪過を全て詰め込んだ箱の蓋を、不注意で娘が開けてしまい、それらが逃げた。だからこの世には、ありとあらゆる絶望が哀しみが苦しみが溢れてやまないなんて、とんだ寝言だ。最後に残った希望ほど性質の悪いものはない。鼻先にそれがチラつくからこそ、人はより深い闇の中に落ちるんだ。
    空色@お題bot(@sora_odai)『箱の底に、何がみえますか?』


    貴方は私を拾う時言ったでしょう。俺のために生きて死ね。だからあの瞬間から私の全ては一切合切残らず貴方のものなのです。今さら悪行の一つや二つ増えたところで、変わりやしませんよ。寧ろ貴方は俺の人斬り包丁に名を意味を理由を与えてくれた。その恩を返すためなら閻魔の首も落として見せますよ。
    飴玉お題bot(@odai_amedamabot)『地獄にだってお供しますよ』


    これしかもう方法はないんだ、なんて何泣きそうなクソダセえ面してやがる。奇跡だなんて気まぐれはな、こっちからブン奪りに行かねえと見向きもしねえんだ。ゼロじゃねえ、ってテメーの足りねえ頭が弾き出したなら、そこに全身全霊魂かけろや。そのくれえの無理難題、さらっとこなしてこその英雄だろ。
    1番星にくちづけを(お題bot)(@firststarxxx)『成功確率0.0001%』


    かり、と無理矢理に剥がした瘡蓋からじわり再び血が滲む。小さく息を呑んで涙目になった君は、恨みがましい眼差しで僕を睨みつけた。「ぁにすんだよ、せっかく治りかけてたのに」「だからだよ」僕のものだって証を消させやしない。その背中に何度だって酷く刻み込んでやるのだ。明日も来月も百年後も。
    宵闇の祷りお題は(@yoiyami_inori)『傷口に爪を立てる』


    「すまない、もう少しかかりそうだ」律儀に任務が長引く連絡をして来る声は、些か疲れているようだった。きっとお前のことだ、無理をして余計なものまで背負い込んでいるのだろう。私が傍にいたなら思い切り甘やかしてやるのに。怪我すんなよ、といつまでも待つ姿勢を見せてはやるものの、正直に言うと
    きみとわたしと(お題bot)(@kimito_odai)『声だけじゃ足りない』


    まるで息をするように君の口から溢れる言葉は嘘ばかりで、本当の気持ちも考えも何一つ明かしてはくれなかった。怒った顔も魅力的だね、なんて思ってもいないことを並べ立てて、大事なことは何一つ教えてはくれなかった。だからすぐ戻るよ、なんて最後の台詞も信じなかった。だから、寂しくなんてない。
    秋桜お題bot(@cosmosno)『いつだって君は嘘つきだった』


    僕らは産まれた瞬間から死へ向かって歩いている。途中の過程は大した意味なんてないのさ。辛さも苦しさも痛みも悲しみも、生きてなければ味わうこともない。死にたくなけりゃ産まれて来るべきじゃないのさ。直そうと治そうと死なない命などない。事故に遭おうが殺されようが病死だろうが意味は同じだ。
    森の奥@創作お題(@mori_odai)『生きるということが死に至る病だと嗤う人』


    こんなものは一時しのぎにしかならないなんてお互いに解っている。熱を吐き出すだけの戯れだ。そこには何の感情もない。お前は俺にあの人を見て、俺はお前にあの人を見ている。下らない。吐き気がする。痛みが増すだけならやめればいいのに、じくじくと疼く汚い欲が今日も足をあの部屋へ突き動かす。
    お題のようなちがうような(お題bot)(@odaimdkbot)『痛み止めのモルヒネ(報われないから慰め合う)』


    ゴメンね、煩くて。ベランダで煙草をくゆらせながらそう笑う彼女の左頬は青黒い痣が刻まれている。夜毎酷くなる罵声と物を投げる音、あるいは悲鳴。どうして笑えるんだろう。どうして許せるんだろう。ただのお隣さんである俺はいえ、と視線を逸らすことしか出来やしない。大丈夫、と訊けたら少しは、
    蝋梅bot(お題)(@roubaititle)『隣人のジレンマ』


    ふと目が覚めた時、傍らにまだ温もりがあると酷く安心する。無意識のうち煙草臭い熱を掻き抱く。忙しいのはお互い様だ。それでも暇を縫って逢いに来てくれるのは、本当に嬉しいと思う。けれど、我儘を言えばもっと一緒に過ごしたいし、目覚めておはようと笑い合いたいのだ。だからそれが叶わぬならば、
    お題bot@烏合(@bot_crowd)『明けない夜のままでいい』


    来世でも一緒にいたいとか、生まれ変わってもまた君に逢いたいとか、そこまで我儘を言うつもりはない。今この瞬間、共に逝こうとしてくれるその優しさだけで充分だ。独りにはしないと抱き締めてくれるだけで充分だ。だからどうか、お前は迷わず明るい方へ。次はどうかこんなロクデナシと無縁なように。
    お題bot(@odai_bot00)『一緒に死のう、この手を繋いだまま。』


    #君があまりにも優しく笑うからの続きをみんながどう書くのか見てみたい
    君があまりにも優しく笑うから、またごめんなさいを言い損ねた。本当は僕が悪いってこと、よく解ってるんだ。飲み込んでしまった言葉の代わりに、ぎゅっと繋いだ手を握り締める。明日はちゃんと言おう。伸びた影、ご飯の匂い。