憎悪を煮詰めてもまだ足りない。嫌悪を突き詰めても程遠い。もっと魂を磨り潰すように、その存在の全てを懸けて私を呪ってくれないか。甘美な睦言は聞き飽きた。賞賛もただの飾りだ。一人、ただ一人君だけが真の私を見据えて断罪してくれるのだ。その刃が届く日を、今か今かと恋い焦がれて待っている。

    お題bot(@odai_bot00)『君は血を吐くように私の名を呼ぶ』



    ふとね、世界はもうとっくの昔に終わってしまっていて、僕だけが知らずにまだ続けようとしているんじゃないかって、独り宛もない未来に取り残されているんじゃないかって、そんな気分になるんだよ。夏祭りの後の境内、シーズンオフの浜辺、バケツに突っ込まれた花火の残骸、夕暮れに響くひぐらしの声。

    お題bot@烏合(@bot_crowd)『晩夏の静寂』



    どれほど焦がれてもどれほど希っても、下心だの真心だのとは縁遠い。手に入れて、きっと貴方が屈服し私を享受してしまったら、価値など魅力など感じなくなるに違いないのだ。傲慢で独り善がりで、どうしようもなく持て余すこの熱をどうかどうか、最期まで否定して蔑んで。それだけが唯一の救いだから。

    君が欲しい@お題bot(@taki_checha)
    『これが恋ではないというのなら
    これが愛ではないというのなら
    答えはひとつだけ。
    これは、欲。』



    ねえこの色塗ってもいい? と訊ねると気まぐれなお遊びだとでも思ったのか、勝手にしろと手を差し出してくれた。無骨で骨節張った長い指、大きな掌、短く整えられた左の薬指に刷毛を走らせる。指輪なんて鬱陶しいと言うに決まっている貴方に、少しでも私の痕を刻みたいの。嫌になったら落としに来て。

    悲しみとお題bot.(@SadnessENDbot)『そのマニキュアをあなたの指に』



    愛だの恋だの些細で変化する想いなんて宛にはならない。どうしたら君に振り向いて貰えるか、ずっと想って見つめて貰えるか、考えて考えて考えたんだ。だから私は君の大切なものを一つずつ奪おうと思う。跡形もなく壊そうと思う。縋って欲しいからじゃない。憎んで嫌悪して、寝ても覚めても忘れないで。

    ※元bot削除済?のためお題タイトル不明



    キスするふりをして貴方は躊躇なく牙を立てる。詰襟かハイネックか、とにかくそんなものを着なければ絶対隠れない位置に。俺のだって自覚しろよ、と言うけれど、いちいちそんな真似しなくたって私はどこにも行かないのに。だからお返しに私も寝ている貴方に痕を残す。うっすら紅く朝には消えるように。

    お題bot*(@0daib0t)『鎖骨に愛を埋めた』



    何度だって機会があればやり直したいと思ってる。もしもあの時違う選択をしていたら、こんなことにはならなかったんじゃないかって、別の道があったんじゃないかって、タイムマシンがあったならどんな手段を用いても自分を止めたいくらいには、後悔してるんだ。確かにそっちがいいとは限らないけれど。

    ※元bot削除済?のためお題タイトル不明



    もう飾る花などないのだから潔く捨ててしまえばいいのに、もう花を飾る君はいないのだから早く捨ててしまえばいいのに、いつまでも「ほら綺麗でしょう?」と笑う声が聞こえる気がして部屋の片隅に転がしている。傍らで色褪せ乾涸びた花の死体は私。もう二度と満たされることはないまま朽ちて行くだけ。

    蝋梅bot(お題)(@roubaititle)『空のままの花瓶』



    夜明け前の空気を切り裂いて、走れ、奔れ。藍闇のコース、観客は無言で佇む信号機のみ。静寂。真っ直ぐに伸びた百メートルを遮るものは何も、ない。無音の合図。軋む鼓動も干上がる呼吸も泣いた昨日に置き去りにして、ひたすら前へ。先を行くあの背中より速く、今の私より一刹那でも速く、走れ、奔れ。

    明るい笑顔の素敵な子で、なんて白々しい上っ面の台詞を嘲笑うように、僕の隣に浮かぶ姉さんは小さく肩を揺らす。その般若顔を見たら、あいつらはどんな反応をするのやら。焼香に立つ若い男を指差しながら「あいつよ」と僕だけに囁く。OK、任せて。ポケットに忍ばせたカッターをちきりスライドさせた。

    #春の星々140字小説コンテスト『明』
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