情報屋はまたも間髪置かずに応対した。
『無事にお仕事貰えたみたいだねー。よかったよかった』
「まだだ。これを完遂して、獲物を渡すまでは終わった訳じゃねえ……だからさっさと詳細な情報くれ」
『んふふ、了解〜。じゃあ、今回の報酬はお金じゃなくて、二代目の坊っちゃんの生写真とかがい』
ぶち、と通信を断ち切って煙草をくわえる。堪えていた緊張がどっと今頃押し寄せたものか、火を灯すまで五回もジッポーを鳴らすはめになった。おまけに吸いつけた紫煙が変なところに入ったせいで噎せた。
ーー落ち着け……大丈夫だ、俺ならやれる……
今までは、何か失敗しても自分一人の責任ですんだ。誠十郎に庇われ守られていた。間違えても正解を最適解を教えてもらえた。今、その後ろ盾はない。
寧ろ、その名を掲げることで負わねばならない責任の重さが増えた。ただの独りの少年が、日々生きるために行って来た軽犯罪(もの)とは比べ物にならないーーそれが伝説であった養父の『名』を背負うと言うことだ。
好き勝手気ままにやればいい時期は過ぎた。一度失敗すれば取り返しはつかない。表に裁かれるか、裏に裁かれるか、違いはただそれだけで、その先に待つのは死あるのみ、だ。
初めて自分からやろうとする大き過ぎる目標に、高過ぎる壁に、見えない重圧に、もう萎縮して潰されてしまいそうなのを、必死に踏みとどまって思考を巡らせる。
ーー心配するなら絶対ミスらない計画を立てろ……これ以上ないくらい練り込んで、考えて考えて、立ち止まるな!
引金は既に引いた。
もう今さら後戻りは出来ないのだ。
→続く
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